引き寄せの秘密セミナー

日々是好日

映画「日々是好日」を観て

 今は亡き樹木希林さん出演の映画「日々是好日」はとっても好きな映画です。何度か観ているのですが、その度に新しい発見があります。「茶道」という「道」を通して生きる上で大切なことにたくさん触れている・・・そんな映画だと思うのです。かく言う私も、長年ピアノをやっているのですが、何かひとつを極めるというプロセスの中でこの映画で語られている事を体感してきたな、と思っています。

「習うより慣れろ」

 よくお稽古事ではそう言われます。映画の中でも「なぜ?」「どうして?」とすぐに質問する若い二人に「そういうものなのよ」と諭す樹木希林さん演じる武田先生。頭で考えるのではなく、身体の感覚を大切にする事、そして繰り返しやった事で自然に身体が覚えていく場面が描かれています。ピアノもそうなんですよね。楽譜が読めたって手を動かさなければピアノが弾けるようにはならないんです。「型」があってそこに心を入れていく・・・・この「型」が染み込んでいることによって、流れるような動作でお茶をたてる事が出来る。そしてピアノもバイエル・チェルニー・バッハといった基礎の「型」が様々な曲を弾く時に、指遣い、曲奏、フレーズ、等がほぼ無意識に動き弾けるようになる。これは頭で考えていたらスラスラは弾けないんですよね。

守破離の姿勢

 この映画では物事を学ぶ基本姿勢を知る事が出来るように思います。まずは師を真似てやってみる。言われた事を型通りやってみる。ここは「素直さ」がものをいうと私は思います。あれこれ「師匠」と言える人について学んできた私は、結局これが一番身につきやすく、自分のものになっていくと思っています。多くの人は早い段階で「自分らしさ」とか「オリジナリティー」を出したがり、「自分流のやり方」になってしまいがちですが、自分らしさは意識せずとも自然に出てくるものなんだと思います。この映画でも主人公の典子は型通りやるところから、「掛け軸を感じる」シーンでは、文字を読み意味を考えるのではなく、滝の流れをイメージして観賞する、そんな自分流のスタイルが身につき、最後は武田先生に「教えてごらんなさい」と言われるまで成長する。そう、この「教える」フェーズに入ると更に新しい学びや発見があるのだと、私自身も人にいろんな事を教えていて思います。

セリフの中に大きな気づき

 この映画のセリフの中にはハッとするセリフが散りばめられています。序盤で心に響いたのが「重たいものは軽々と、軽いものは重々しく扱う」という言葉でした。これは人生に当てはめたら、重大な事、辛い事などは軽々と羽ばたくように楽観的に。日常の些細なことや当たり前とも思えることを大切に丁寧に感謝を持って生きる・・・私にはそんなメッセージとして受けとりました。私は茶道をやったことはないけれど、その所作一つひとつに生きる「叡智」が込められているんだろうな、とこの映画を観て思いました。それを1杯のお茶をたてるという動作の中に凝縮させるとは・・・なんて粋なんだ。話はそれますが、日本に限らず様々な国で飲まれているお茶やコーヒーの文化というのは、「ただ飲む、喉を潤す」ということに止まらず、様式美・コミュニケーションなど多くの意味合いがあるのだろうな、と思っています。私はコーヒー豆をひいて、コーヒーをゆっくりといれるのが好きで、あの香りと湯気が立ち上っているのを観ると、とってもマインドフルな気持ちになります。時々いれただけで満足して飲み忘れている時もあるくらいです。・・・・笑

いつも寄り添う師の姿

 主人公の典子が大失恋をしてしばらく茶道を休みますが、そんな典子を武田先生は温かく見守り「ただお茶を飲みにくればいいじゃない」と寄り添います。また典子の父が亡くなる前日に父からの誘いを断っていた典子は自分を責めます。そんな典子を「そんなに自分を責めちゃだめ」と優しく声をかけます。典子にとって武田先生は「お茶」を教えてくれるだけの人ではなく、まさに「人生の師」なのです。ああ、私、こういうやって生徒さんや受講生さんと関わっていきたい・・・そんなイメージが湧いた武田先生の「在り方」でした。

毎年同じ事が出来るってことが幸せ

 物語の終盤、初釜のシーンで「あたし最近思うんですよ。こうして毎年同じことが出来ることが幸せなんだなーって」と言う武田先生。私はまだまだ本当の意味でこの境地には至れないと思うんですが、同じ事をする事で、まるで韻を踏むように人生の大切な日々が蘇ってくるような感覚があるのかもしれません。そして本当に当たり前にできていることが本当は当たり前ではないということに、歳を重ねるごとに体感していくものなのかもしれませんね。

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